something more precious

04


「ところでおちびちゃん、どこか行こうとしてたけど、何処行こうとしてたの?」
お互いに打ち解けあった後、フイにエイジがリョーマを呼び止める前にリョーマがどこか行こうとしていたのを思い出
し、リョーマに聞いた。
「ああ。初日だからって皇帝陛下が一緒に朝食をとろうっておっしゃったから。」
「じゃあ、今からホールに朝食をとりに行くんだね。道わかる?」
「・・・・・・わかんない。」
「俺たちが連れて行ってあげるよー。行きながらいろいろ教えてあげるよー!」
「ありがと。」
「よし!じゃあ、行こう!」
「ちょっと待って!!」
リョーマとエイジが歩きだそうとしたところでシュウスケが2人を止めた。
「どうしたのさ、フジ?」
「シュウスケ?」
「リョーちゃん、その格好で行くの?」
「え?ダメ?」
リョーマは、膝より少し下までで裾が折り返してある青のズボンに黒のブーツを履き、細い紐で細身の剣を腰に提
げ、上は色違いのタンクトップを2枚重ねにして着ていた。
「今から皇帝陛下に会いに行くのにその格好はラフすぎない?」
「だって、皇帝陛下がラフな格好でいいって。」
「でも、せめてドレスにしようよ。」
「俺、スカートキライ。」
「キライじゃなくて、お願いだから、皇帝陛下と一緒に食事をするときだけでいいからドレスを着て。」
「・・・・・・・・・わかったよ。」
「じゃあ、早く着替えよ。エイジ手伝って。」
「りょーかい〜。」
そして、リョーマの着替えが終わり、シュウスケとエイジはホールに着くまでの間リョーマに説明をしながら歩いて行
った。









































「皇帝陛下、遅くなって申し訳ありません。」
3人がホールに着いた時には言われていた時間を少しオーバーしていた。
「申し訳ありません、陛下。姫様は悪くないのです。私たちが姫様を色々ご案内していたら遅くなってしまったので
す。」
「ああ、別にかわないよ。さぁ、姫、席にどうぞ。朝食にしよう。」
「はい。」
皇帝であるクニハルに言われてリョーマは無表情で席に着いた。シュウスケとエイジは別に設けられていた自分たち
の朝食に席へと移動した。
食べ始めてからしばらくして、クニハルが口を開き、3人の姫へ質問をした。
「姫君たちはどんな趣味や特技をお持ちかな。」
「私くしはお料理が得意ですわ。趣味でもありますの。」
最初に答えたのはセウフィ国のレイ・セウフィだった。答える際、媚を売った笑顔で目線はクニミツの方へ向いてい
た。
「ここの料理はお口にあいましたかな?」
「はい。とてもおいしいですわ。今度教えていただきたいくらいです。」
「それはよかった。うちの自慢のコックだからね。ケイ姫はどんなことが得意ですかな?」
「私は裁縫が得意ですわ。趣味はドレスを作ることです。」
次に答えたのはスタバニ―国のケイ・スタバニーで、こちらも同じような笑顔だった。
「では、あなたが今着ているドレスも手作りですかな?」
「恐れながらそうでございます。」
「すばらしい出来だ。器用な手をお持ちだ。」
「ありがとうございます。」
「では、リョーマ姫は?」
「私は、特に趣味などはありません。ただ、剣などの稽古をすることが毎日の日課ですが。」
「剣?姫なのに?」
「女だとか姫だからとかは関係ありません。自分の身は自分で守るようにと父に教わったからです。剣や体術等もす
べて父から教わりました。」
「ほう。では、料理や裁縫などはできないのかい?」
「いいえ。料理や作法などは全部母から教わったのでできます。・・・・・・・・・・ただ、舞を踊ることは好きです。」
「舞?」
「はい。でも、私には剣や体術のほうが性にあってますので、あまり踊りません。」
クニハルとリョーマが話してるときに横からコソコソと2人の姫が話していた。
「姫に剣を握らすなんてなんて野蛮な父親でしょう。」
「その人の人間性を疑いますわ。」
「母親も母親ですわ。なんで止めないんでしょう。」
「でも、あの姫があんな風にお育ちになったのもうなずけますわ。」
バンッ!!!!!!!
2人の姫の会話は、リョーマが立ち上がりテーブルをたたいたことにより止まった。その場には沈黙が訪れた。
「俺のことを何と言おうが、馬鹿にしようが、何をしようが気にしねぇし、かまわねぇ。」
誰もしゃべらないし、音も立てないのでホールにはリョーマの声が響いた。
「でも、父様や母様のことを悪く言うのは我慢ならねぇ!!!俺はこういう環境に産んでくれてよかったと思ってい
る!!どうせあんた等はこの無表情な男に守ってもらうからいいとか思ってんだろっ!!俺はこいつに守ってもらおう
とか思ってねぇ!!!!自分の身は自分で守る!!!!・・・・・・・・・・・・・皇帝陛下、俺はもうこいつの顔を見たくな
いんで部屋に帰らしてもらいます。もうこういう場に呼ばないで頂きたい。」
そう叫んでリョーマは走ってホールから出て行った。その場にしばらく沈黙があったがゆっくりアヤナが口を開いた。
「シュスケ、エイジ。リョーマ姫を追いかけてあげなさい。」
「「はい。」」
アヤナに言われ、シュウスケとエイジは走って急いでリョーマを追いかけていった。
「レイ姫、ケイ姫。リョーマ姫の父であるナンジロウ国王と母であるリンコ様は私くしたちのお友達であり親友ですの。
私くしたちのお友達を侮辱することはお止めください。」
「「も、申し訳ありません。」」
「場が重くなってしまいましたね。これでお開きにいたしましょうか、アナタ。」
「そうだな。では、朝食は終了とする。みんな、自分の持ち場へ行ってくれ。姫君たち、自由にお過ごしください。」
クニハルの言葉で解散となった。










































「ひ――――――――め――――――――!!!!!!!」
「おちび――――――――!!!!!どこにゃ―――――――!!!」
シュウスケとエイジはあれからずっとリョーマを探しているが一向に見つかる気配がなかった。
「どこいったんだろ〜。」
「部屋にもいなかったよね。」
「う〜ん。庭にでも行ってみる??」
「そうだね、行ってみようか。」

































「お―――――――ち――――――――び―――――――――!!!」
「あっ!エイジ!あそこ!!」
庭を探しているとシュウスケが庭の隅の方でうずくまっているリョーマを発見した。
「リョーちゃん??」
「おちび大丈夫かにゃ?」
「・・・・・・・・・・・・・・シュウスケ・・・・・・・エイジ・・・・・・・・。」
顔を上げたリョーマの大きな目には大粒の涙が溜まっていた。
「リョーちゃん・・・・。」
「おちび・・・・。」
シュウスケがそっとリョーマを抱きしめ、エイジが背中を撫でた。
「・・・・っ・・・・・父様っ・・・・・母様・・・っ・・・・・。」
リョーマはシュウスケにぎゅっと抱きついて涙を流した。
「ふぇっ・・・・・会いたいよ・・・・っ・・・・・父様と母様にっ・・・・ふっ・・・・・・会いたいよ・・・・っ・・・。」
それからしばらくその場にはリョーマの泣き声だけが響いていた